【モスクワ=小柳悠志、パリ=谷悠己】旧ソ連ベラルーシのポーランド国境に中東からの難民が大量に押し寄せ、侵入を阻もうと周辺を封鎖するポーランド当局との間で状況が緊迫している。8日には約3000人の難民が国境に集結したもようだ。欧州連合(EU)はべラルーシ当局が意図的にEU加盟国に難民を送り込んでいると批判しており、対立が激化する一方だ。
ポーランド国防省は同日、ベラルーシとの国境に難民が集結し、ポーランドへの入国を試みているとツイッターで発表。同時に「難民の背後にベラルーシ当局がいる」と指摘した。
モラウィエツキ首相も9日、自身のツイッターに「国境を守ることは私たちの国益でもあるが、今やEU全体の治安がかかっている」と投稿した。
一方、タス通信によるとベラルーシ国境警備隊は移送への関与を否定した。
EU加盟国の国境には、この夏からベラルーシ経由でイラクなどの難民が押し寄せている。リトアニアへの不法入国者は例年の20倍以上に達した。欧米から国内の人権弾圧で非難されるベラルーシのルカシェンコ大統領は、難民移送でEUを混乱させる狙いとみられている。ベラルーシと連合国家を組むロシアは国営放送が「難民受け入れを渋っている」と報じるなどEUを批判している。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は8日、声明を発表し、「ベラルーシ当局による難民の政治利用は受け入れられない」と非難した。
声明では加盟国にベラルーシへの追加制裁を呼び掛けたほか、同国内に到着する難民の出身国などの第3国に対しても、航空会社などへの制裁を検討する考えを示唆した。EUは法の支配を巡ってポーランドと対立しているが、フォンデアライエン氏は制裁策を巡ってモラウィエツキ氏と協議したことも明らかにした。
欧州メディアによると、ポーランド議会は先月末、難民流入を防ぐためベラルーシ国境に壁を建設する政府案を承認。EUに資金援助を求めているが、フォンデアライエン氏は人道面への配慮から資金拠出を拒否する考えを示している。