円相場は、日本とアメリカの金融政策をめぐる投資家の思惑からここ数年、大きく動いてきました。
欧米各国の中央銀行がインフレの抑制に向けておととし・2022年以降、急速に利上げを進めたのに対して日銀はマイナス金利政策をはじめとした大規模な金融緩和策を続けてきました。
こうした日本と欧米との金融政策の方向性の違いから円安が加速します。
2022年9月、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会が大幅な利上げに踏み切った一方、日銀が大規模な金融緩和を維持。
当時の黒田総裁の利上げを否定する発言もあって円相場は、1ドル=145円台後半まで急落し、政府・日銀はおよそ24年ぶりとなるドル売り円買いの市場介入に踏み切りました。
しかし、10月には、アメリカの利上げのペースが速まるという見方から、再び円安が進み、円相場は、10月20日、およそ32年ぶりに150円台まで値下がりしました。
日本時間の21日深夜から22日の未明にかけて1ドル=151円台後半まで下落したところで、政府・日銀が介入の事実をあえて明らかにしない「覆面介入」を実施。
円相場は1ドル=144円台半ばまで一気に7円以上円高が進みました。
円相場、2023年は1ドル=130円程度でスタートしました。
ただ、アメリカでインフレが長期化し、金融引き締めが強まるとの見方から、金融緩和を続ける日本との金利差が拡大、じりじりと円安が進みます。
2023年5月に1ドル=140円台、6月には145円台まで値下がりしました。
日銀は7月下旬、金融政策の運用を柔軟化し、長期金利の一段の上昇を容認。
為替市場の過度な変動を抑えるねらいもありましたが、その後も円安は進みます。
そして、2023年11月、FRBのパウエル議長が市場で広がっていた利上げ終結の観測をけん制したことなどから円相場は11月13日に一時、1ドル=151円92銭まで円安ドル高が進み、1990年以来の円安水準である1ドル=151円95銭まであと3銭に迫りました。
その後はアメリカの長期金利の上昇傾向が一服し、日銀が大規模な金融緩和策を修正するのではないかという見方も広がったため、2023年12月には140円台までじわじわ円高が進みます。
ことしに入ってからはアメリカでは根強いインフレを背景に利下げの時期が遅れるとの見方が広がり、2月には1ドル=150円台まで円安が加速しました。
日銀は3月19日にマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに金利を引き上げることを決めました。
利上げであれば一般的には利回りが見込まれる通貨が買われ円高となるはずですが、植田総裁が記者会見で追加の利上げを急がない考えを示唆したことで市場では今後も緩和的な金融環境が続くという見方が広がり、151円台後半まで円安が進みました。
そして3月27日に日銀の審議委員の講演で、追加の利上げについて踏み込んだ発言がなかったという受け止めが広がると、円相場はおととし10月につけた1ドル=151円94銭より値下がりして、1990年7月以来、33年8か月ぶりの円安ドル高水準となりました。
その後もアメリカでインフレの根強さなどを示す経済指標が公表されるたびに円安が加速します。
そして4月29日には円相場は一時、1990年4月以来、34年ぶりに1ドル=160円台まで値下がりしましたが、その直後、円相場は円高方向に大きく振れ、154円台まで値上がりしたほか、日本時間の5月2日にも急激に円高方向に動く場面があり、当時は政府・日銀が介入の事実を明らかにしない「覆面介入」を繰り返したという見方が強まっていました。
財務省はその後、4月下旬から先月下旬までの1か月余りの間に政府・日銀が総額9兆7000億円余りを投じて市場介入を実施していたことを明らかにしました。
FRBが6月中旬に開いた会合のあと参加者は年内の利下げの回数の想定を3月時点の3回から1回に減らしたことを明らかにしました。
市場ではFRBが利下げを急がないとの見方が再び広がり、円売りドル買いの動きが強まっていました。