参議院議員の石崎聖子さん、さて誰でしょう? 政治団体の収支報告書から「旧姓使用」を考える:東京新聞 TOKYO Web

戸籍名を記載している議員の収支報告書。上段が山谷えり子氏、2段目右が森まさこ氏、同左が丸川珠代氏、3段目右が蓮舫氏、同左が橋本聖子氏=一部画像処理

 国会議員らが代表を務める政党支部などの政治団体。その収支報告書の代表者名は、ほとんどが「戸籍名」で記載されている。だが、旧姓で政治活動する女性議員らは少なくなく、なじみのない戸籍名での表記だとわかりにくい一面もある。今後、女性議員が増えると見込まれる中で、少なからぬ混乱を生まないか。選択的夫婦別姓制度導入に向けた議論も進む。収支報告書から、「旧姓使用」を考えた。(特別報道部・木原育子)

◆普段は旧姓、見慣れない戸籍名 総務省は「選管に任せている」

講演する橋本聖子・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会会長(参議院議員)=2021年11月

 1日、JR新橋駅周辺。石崎聖子さん、小川恵里子さん、大塚珠代さん、三好雅子さんの名前をノートに書き、行き交うサラリーマンら20人に「突然ですが、この人を知っていますか」と尋ねてみた。

 営業途中に駅に立ち寄ったシステムエンジニアの男性(31)は、「う~ん…」と数秒の間の後、「アイドルって感じの名前ではなさそう。往年の女優さん?」。

 喫煙所にいた飲食店勤務の男性(32)は、「昔つきあってた子に、聖子って名前の子がいたな」と遠くを見つめた。銀行で用事を済ませて会社に戻る途中だったという事務員の女性(47)は「見当もつかない。一体、この人たち誰?」。

 この日、男女計20人に同様の質問をしたが、正解した人はゼロだった。この4人に加えて、「斉藤蓮舫さん」を加えると、20人のうち2人が正解した。

 この女性たちは参議院議員だ。橋本聖子議員、山谷えり子議員、丸川珠代議員、森まさこ議員、蓮舫議員の戸籍名。閣僚や閣僚経験のある女性政治家で現役の国会議員は現在19人いるが、この5人は結婚するなどして戸籍名と政治家としての活動名が違う。閣僚経験のない議員を含めれば、もっとあるだろう。

 この5議員が、代表を務める政治団体の収支報告書代表者欄には、見慣れない戸籍名が記されている。

 総務省に聞くと、収支公開室の担当者は「実質的な審査権はなく、届け出されているものを受理するだけ。政治資金規正法上の規定も設けられていない。各選管に任せている」。

◆収支報告書にどう記載するか、厳格な定めなく…

 そこで3月下旬、「代表者名の記入欄はどのような規定になっているか」と、47都道府県選管に質問文書を送った。結果は、33都道府県が「戸籍名」での記載を求めていたものの、その理由はさまざま。

 最多の24道県が答えたのは、「政治団体の設立届に記載された代表者名の記入を求めている」というもの。設立届の代表者は、戸籍上の氏名の記載が必須なため、必然的に収支報告書の代表者名も戸籍名になるということだ。

 三好雅子の名で福島県選管に「県参議院選挙区第4支部」の報告書を提出した森まさこ議員は、「通称名やペンネームではなく、必ず戸籍上の氏名を記載してくださいと(県選管の)注意事項にある」と文書で回答。山谷議員の事務所も「東京都選管は戸籍名での提出を求めている」と答えた。橋本、丸川両議員も同様の答えだった。

 だが実は、政治資金規正法上、収支報告書に代表者の氏名をどう記載するか、については厳格な定めはない。「設立時に戸籍を確認しているものではない」(福井)、「整合性のみを確認している」(広島)と言葉を足した選管も多かった。

 そのほか、「法に基づいて行う各種の届け出は全て、『戸籍名』を用いて行うことが原則だ」(山梨)、「通例、氏名は戸籍名と認識している」(兵庫)と戸籍法に基づく意見もあった。 この「旧姓使用」、何が問題かというと、政治資金の流れをチェックする際に分かりにくいことだ。