日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は2022年10月5日、成田空港で報道陣の取材に応じ、岸田文雄首相が水際対策緩和を打ち出してから、海外発日本行きの国際線の予約数が3倍以上に増えたことを明らかにした。
ただ、その多くが国外から日本にやってくる「インバウンド需要」で、日本発の需要は「まだ、かなり弱い」。観光需要は円安の影響で冷え込んでおり、海外出張を制限している日本企業も多い。赤坂氏によると、海外に出てビジネスをする際も「日本人だけいない」。「こういう状況はまずいんじゃないかなあ…」と危機感をあらわにした。
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JL407便は140人を乗せてフランクフルトへ出発した。
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フランクフルト線の60周年記念式典であいさつする日本航空(JAL)の赤坂祐二社長
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歴代制服姿の客室乗務員(CA)が式典に出席した。中央が4代目(1967~1970年)、両端が現行デザイン
「こういう状況はまずいんじゃないかなあ…私どもが言う話じゃないのかも知れませんけど」
岸田文雄首相は訪問先のニューヨークで9月23日(日本時間)、短期滞在ビザの免除や個人旅行の解禁を表明した。海外発日本行きの11-12月の予約数について、首相発言直前の9月9~15日と、直後の9月23~29日を比べると、3倍以上に伸びたという。特に香港や台湾からの予約が伸びているといい、「円安がものすごい追い風」になっている。
ただ、日本発の需要は「まだ、かなり弱い」状況だ。観光需要は「円安の影響がものすごく大きい」上、ビジネス需要は「まだまだ海外でビジネスに行けるというような機運が、まだ企業の中にない。まだまだ海外への出張を制限している企業がたくさんある」ため、低調な状態が続いている。その上で次のように話し、海外出張を避けることによる日本経済への影響を懸念した。
「これではやっぱり、日本の経済あるいは産業が、これから、ちょっと難しいんじゃないかなぁと思う。私も海外に出ているが、まったくそんなこと(コロナ禍)関係なく、フェイス・トゥ・フェイスのビジネスが行われている。日本人だけいない。こういう状況はまずいんじゃないかなあ(と思う)。私どもが言う話じゃないのかも知れませんけど。早く日本人の皆さんの需要が戻ってくることを期待しています」
60年前はカルカッタやカラチを経由する「南回り」で運航
この日、成田空港では東京-フランクフルト路線の就航60周年式典が開かれた。60年前に開設された際は「南回り欧州線」の一部で、フランクフルトはロンドンと日本を結ぶ路線の経由地のひとつだった。
就航当時のルートは東京-香港-バンコク-カルカッタ-カラチ-クウェート-カイロ-ローマ-フランクフルト-ロンドンの、いわゆる「南回り」。中型ジェット機のコンベア880型機で週に2往復した。69年に北回り(アンカレジ経由)の運航が始まり、74年にはモスクワ経由便を開設。88年から直行便が運航されている。
冷戦終結後はシベリア上空を飛行してきたが、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、約30年ぶりに「北回り」「南回り」ルートが復活した。往路(日本→ドイツ)はアラスカ、カナダ、グリーンランド上空を通る「北回り」、復路(ドイツ→日本)は、ルーマニア、ブルガリア、トルコ、ジョージア、アゼルバイジャンを経てカスピ海上空を通り、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、中国、韓国を経て日本に到着する「南回り」だ。
この日のフランクフルト行きはJL407便(ボーイング787-9型機)。乗客195人(ビジネスクラス44人、プレミアムエコノミー35人、エコノミークラス116人)を乗せることでできるタイプで、実際の搭乗客は140人(ビジネスクラス29人、プレミアムエコノミー21人、エコノミークラス90人)だった。搭乗率は71.8%だった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)