[ユーザー事例]
“究極のCX”と“脱レガシーシステム”を主導したIT部門のアクション
2022年4月14日(木)神 幸葉(IT Leaders編集部)
イーデザイン損害保険(イーデザイン損保)は、東京海上グループのデジタルR&D拠点の役も担って、“インシュアテック保険会社”へのトランスフォーメーションに取り組んでいる。2022年4月13日、セールスフォース・ジャパン主催の「Salesforce LIVE: Japan」のセッションに同社 取締役 IT企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長の酒井宣幸氏が登壇。経営課題解決のために掲げたインシュアテック保険会社構想と一連の取り組みを説明した。
経営課題と“インシュアテック保険会社構想”
イーデザイン損害保険は、東京海上グループの事業・事故対応実績ノウハウを基に2009年に設立されたネット型自動車保険会社である。設立時からネットやデジタルを活用した保険商品・サービスを提供してきた同社には、「究極の顧客体験(CX)の実現」「レガシーシステムからの脱却」という2つの経営課題があった。
1つ目のCX実現については、2018年6月~10月に「ありたい姿プロジェクト」として、組織横断でワークショップを開催したとき、顧客への価値提供のあり方をデジタル活用で抜本的に変えるという機運が高まる。これは、「デジタルネイティブ層が拡大していく中、従来のダイレクト保険会社とは一線を画したビジネスモデルへと変革する必要がある」という経営陣の問題意識と合致した。
2つ目のレガシーシステムからの脱却はIT部門の共通課題と言えるテーマだ。同社の情報システムは1990年代の保険パッケージをベースにカスタマイズを続けてきた。そのため、近年の顧客や社内ニーズに応えるための機動性や柔軟性の不足、システム維持コストの急騰、技術者枯渇など多様な課題リスクを抱えた状況だったという。
同社 取締役 IT企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長の酒井宣幸氏(写真1)は、「経済産業省が試算している“2025年の崖”問題(注1)と酷似した状況に陥っており、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の上で大きな課題となっていました」と説明する。
注1:2025年の崖は、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」で指摘した日本企業の課題。企業が老朽化・陳腐化した既存のレガシーシステムを改善できずにDX推進が上手く行かなかった場合、2025年までに様々な問題や損失が顕在化し、他国との市場競争力の差が挽回不可能な状況に陥ることを警告している。
写真1:イーデザイン損害保険 取締役 IT企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長の酒井宣幸氏
これらの経営課題に立ち向かうべく同社が掲げたのが、「インシュアテック保険会社構想」である(図1)。インシュアテック(InsurTech)とは、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた生命保険領域のデジタル化の取り組みを指す。
図1:経営課題とインシュアテック保険会社構想(出典:イーデザイン損害保険)
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構想推進の源泉として同社は、企業パーパス(Purpose:存在意義、目的)の再定義から取り組んだ(図2)。そこで掲げられたのが、「デジタルの力を借り、事故のない世界そのものを顧客と共創する」というもの。そのうえで顧客には「4つの究極」をバリューとして届けることをコミットメントに据えている。
図2:企業パーパスの再定義(出典:イーデザイン損害保険)
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