なぜいま人気?異業種からの農業参入 | NHK | ビジネス特集

なぜいま人気?異業種からの農業参入 | NHK | ビジネス特集

高齢化が進み、担い手不足に悩み続けてきた農業。しかしいま、未経験の若い人たちが参入するケースが増えています。現場を取材すると、むかしのイメージは様変わり。新しい農業の形が広がり始めていました。(経済部記者 保井美聡) 若者であふれかえる就農相談会 異業種から新たに農業を始める人が増えているという話を聞き、まず訪れたのが新規就農を目指す人向けの相談会です。目立ったのは、20代や30代の若い人の姿。参加した人に話を聞いてみました。 会社員(29)「もちろん大変だというイメージはあるが、農業には生産から販売までできる人材が少ないと思うので、ビジネス経験がある人材がいれば、より活性化できるのではないか。何個かブースを見たが、可能性はすごい高いと思った」 金融機関勤務(24)「自分の手で食べ物を育て、直接お客さんに届けて喜んでいる顔を見られたらすごくいいと思うようになった。これからもっと調べていきたい」 主催した矢野孝治さんは、新型コロナの感染拡大や世界情勢の変化も若い人たちが農業を目指すきっかけの1つになっていると言います。 イベントを主催した矢野孝治さん「新型コロナの感染拡大で飲食やサービス業が打撃を受け、そういった方たちも新たに農業に関心を持つようになっている。ロシアのウクライナ侵攻やSDGsへの関心から、自給自足的な思考や、都心にこだわらない移住思考も強くなっているのではないか。国の支援制度も豊富に用意されているので、若者の職業の選択肢になりつつあると感じている」 デザイナーからいちご農家に転身 実際に、異業種から農業に参入した人を訪ねてみました。滋賀県東近江市の小林佳紫さん(31)です。 3年前、転職活動の一環で農業セミナーに参加し、それ以来、農園の計画を温めてきました。そして2021年3月にいちご農園をオープン、農業に必要な技術は地元の農業大学で1年かけて習得しました。設備投資に2600万円かかりましたが、多くを政府系の金融機関から無利子で借りることができました。もともと小林さんは、出版社でデザイナーとして働き、フリーペーパーの広告のデザインなどを担当していました。 そのスキルをいかして、農園のロゴマークや案内の看板を作ったり、日々の出来事をイラストにしてSNSで発信したりしています。開業してまもないため、まだ収益は安定していません。それでも未来の農園のイメージを尋ねると、こんなイラストを描いてくれました。 さっそく今シーズンからいちご狩りを始めるほか、ゆくゆくはたき火を囲むアウトドア施設なども設け、訪れた人が楽しめる空間にしたいと考えています。 小林佳紫さん「近隣のベテラン農家さんからアドバイスをもらえるし、県や市のサポートも手厚いと感じる。今までの仕事の経験もいかし、どうやったらお客さんの心に届くかということを考えて、楽しみながらやっていきたい」 若手の受け皿 農業法人とは 「たしかに農業に興味はあるけれど、いきなり自分の農場を持つのはちょっと」って思った方もいるかもしれません。そういう人たちの受け皿になっているのが「農業法人」です。2020年の調査では国内に3万社あまり、10年間でおよそ1万社増えました。農林水産省によりますと、新たに農業法人などに入って農業を始めた人は去年1万1570人と過去最多を更新。親などの後を継いで農業を営む人は年々減っているのに対して、農業と無縁だった若い人たちが農業法人に次々と就職しているんです。 年収1000万円も夢じゃない 実際に農業法人を取材してみました。埼玉県加須市にある「中森農産」です。 社長の中森剛志さんは34歳、農業系の大学を卒業し、1から農業法人を設立しました。耕作放棄地などを借り受け、今では東京ドームおよそ50個分の230ヘクタールの農地で作付けを行っています。ここでは10人の社員が働いていて、平均年齢は29歳です。多くが農業以外からの転職者で、毎年のように新たな従業員が入社していると言います。 中森剛志さん「農業をやりたい人は起業しなければいけない。しかし起業は誰でも負えるリスクではない。そこで農業法人という受け皿があれば、若者を農業界に引き込む入り口になると考えて立ち上げた」 中森さんの農場では、コメや大豆、家畜のエサ用のとうもろこしなどを栽培しています。 設立から6年たち、売り上げは1億円を超えるまでになりました。中森さんが目指すのは、普通のサラリーマンにひけをとらない給与水準。数年以内には、部長級の社員の年収を1000万円に引き上げたいと考えています。 システムエンジニアから農業へ そのポジションにいるのが、農場長の佐藤康平さん(29)です。大学卒業後、都内でシステムエンジニアとして働いていましたが、3年前に転職。その際、両親からは「苦労させるために大学に行かせたわけではない」と大反対されたそうです。しかし、そうした農業のイメージも含めて、佐藤さんは変えていきたいと考えています。 佐藤康平さん「僕は農家や百姓ということばがあまり好きではないんです。百の仕事ができるというものの、その分、労働時間が長くなったりすると思うので、しっかりスペシャリストが集まるような会社組織を作って、持続性のある農業法人を目指していきたい」 このほか映像製作会社や電気工事会社、それに運送会社から転職してきたという人もいます。 話を聞いてみると「休みは不定期だけど自分の休みたい時に休めるし、前より給料が高くなった」「新型コロナなど感染症の影響を受けにくく、生きる基本である食べ物を作るという意味では安定した仕事だ」など、いずれも農業の仕事に満足している様子でした。 農業は若者の選択肢になっている 「農業を始める」と聞くと、今までは実家の後を継いだり、退職後の趣味として行ったりするイメージでしたが、若者の就職先の選択肢になってきていると強く感じました。ロシアによるウクライナ侵攻などで食料安全保障が叫ばれる中、持続可能な産業として農業の価値を見直す若者が増えていることも背景にあると思います。若者の意識の変化に合わせて、国や農業界も適切な支援を行い、農業に従事する人を継続的に増やしていけるかが問われています。この追い風をものにできれば、10年後20年後の農業は大きく変わっているかもしれません。 経済部記者保井 美聡2014年入局仙台局、長崎局を経て現所属農林水産省担当

世界で起こるビジネスモデルの大変革 その時、広告産業はどう変われるのか? #宣伝会議 | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議

日本経済を支えてきたメーカーをはじめとする多くの企業が、いまビジネスモデルを大きく変えざるを得ない、イノベーションの必要性に直面しています。それでは、はたして「広告産業」に変化、そして進化は起きているのでしょうか。企業のIT化戦略やイノベーションを専門に研究し、ビジネス界全体の変革を見てきた早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授に、現状の広告産業について考えを聞きました。 ※月刊『宣伝会議』7月号(6月1日発売)では、「広告産業にイノベーションは起こせるか?」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。 PF依存と独自化で二極化するマーケティングプロセス 世界的なデジタル化の波に乗り、業種や業態を問わず、企業には組織や仕組みの変革が求められている。 その変革のひとつが、業務の効率化や競争力を上げるための、プロセスのデジタル化だ。 事業会社側においては、マーケティングプロセスをできるだけ自社で行う企業と、プラットフォーム(PF)に依存する企業の二分化が進むと根来教授。「特に大規模な小売業、飲食、ファッション企業の場合、顧客接点をプラットフォームに依存するか、自社で運営するかの選択問題が起こっています」と話す。 「例えばファッションECサイトであるZOZOタウンは、各ブランドからの受託販売業務のビジネスモデルで成り立っている。しかし、大手アパレルメーカーが撤退する動きもありました。その理由は、購買という最も重要な顧客接点を自分たちで持つため。生活者への露出が減って売上が減少したとしても、自社ECに絞ることで価格設定も自分たちでコントロールでき、ブランディングもより思い通りに推し進めることができます」。 ニュースアプリやSNSを使ったクーポン配信も、宣伝広告のプラットフォーム依存といえる。一方で、できるだけ自社アプリですべてを完結させようとする企業もある。 「さらに電子マネーも組み込むことで、集客から購買までマーケティングプロセスを一元的に管理することができる。ワン・トゥ・ワンを推し進めたい企業にとってはプラットフォームに依存することは避けたいけれども、開発にはコストがかかるし、消費者に独自アプリを登録してもらうという壁があるので、簡単にはやめられない」。 また根来教授は、宣伝のためのメディアの活用についても、「若年層への接点を求めて、デジタルに移行せざるを得ない部分がある」と指摘する。実際にテレビCMだけではなく、YouTubeでメイキング映像を公開したり、オウンドメディアで追加情報も加えて展開したりと、ひとつのコンテンツをメディアごとに出しわける企業が増えている。コンテンツが溢れている中で自社メディアをわざわざ見に来てくれる生活者は、自社製品の熱心なファンになってくれる可能性がある。顧客のロイヤルティを高めるためにも、メディアの選択とメディアごとの発信内容を工夫する必要がある。 そして以上のようなプロセスのデジタル化だけでなく、メディアのデジタル化への対応も迫られる。「広告媒体として紙メディアの価値はなくなっていない。しかし、クッキーレスやトラッキング防止の流れはあるものの、セグメント化されてIDに結び付けられた情報を持っているデジタルメディアの価値はさらに高くなるでしょう」。 広告ビジネスの構造変化 新規レイヤーのどこに注力するか? 根来教授は現行の広告ビジネスモデルについて、デジタル領域が拡大することで新たなレイヤー構造が生まれていると話す【図表1】。 「認知から店舗での購入、アフターサービスなど、顧客に関わるマーケティングのプロセスのなかで、広告だけを独立して取り出して考えるのではなく、一連の流れのなかで位置づける傾向は、より強化されていくと考えられます」。 ニーズを探って開発した製品・サービスを、適切なメディアで宣伝して、その効果を分析する。さらに、経営と結び付けた戦略立案までもが、広告ビジネスのレイヤーとして位置付けられるようになってきている。 このように、事業会社側にとって、デジタル化によって、さらにやるべきこと・やれることは増加した。そうしたマーケティングプロセスを一貫してマネジメントする方向性になっていく中で、IT企業やコンサルティング系企業が広告ビジネスに参入する傾向もある。そこで生じるのは、広告会社がどの部分を担えるのかという課題だ。今後、メディアと広告主をつなぐだけにはとどまらず、顧客データの管理・分析を行う「データビジネス」、デジタル化への対応を含む「市場戦略策定ビジネス」にも注力していくことになるだろうと、根来教授は指摘する。 本記事の続きは月刊『宣伝会議』7月号(6月1日発売)に掲載しています。 早稲田大学ビジネススクール 教授根来 龍之 氏 早稲田大学IT戦略研究所所長。経営情報学会会長、CRM協議会顧問などを歴任。著書に『ビジネスモデル』(SBクリエイティブ)、『集中講義 デジタル戦略』、『プラットフォームの教科書』、『ビジネス思考実験』、『事業創造のロジック』(以上、日経BP)など。   月刊『宣伝会議』7月号は、特集企画が満載! 4本の特集から、現代の広告戦略に迫ります。   特集1 企業が聞くべきSNSの声とは?「ネット世論と広告炎上」   特集2 大手広告主33社に聞く「コロナ禍の広告戦略」 I-ne、赤城乳業、アサヒ飲料、イデアインターナショナル、NTTドコモ、エバラ食品工業、大塚製薬、カゴメ、カルビー、キッコーマン食品、クレディセゾン、コーセー、ジェーシービー、第一三共ヘルスケア、出前館、東京ガス、東京個別指導学院、日清オイリオグループ、日本たばこ産業、日本ハム、ファンケル、フジッコ、ポーラ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、マンダム、三井住友カード、森永製菓、森永乳業、ヤマハ、ユーグレナ、有楽製菓、ライオン、レノボ・ジャパン   特集3...

ビジネス特集 働くあなた 手首から見守ります | NHKニュース

「あ、まずいな」と思ったときには意識を失い、次に目を覚ましたのはベッドの上でした。大学生の時、野外のアルバイトで「熱中症」になった私。体調の異変を感じていたのに、周囲の人に伝えることができませんでした。体調が悪くなったのに言いだせない。仕事中にそんな経験をしたことはありませんか?手首につける“あの端末”が、働くあなたを救ってくれるかもしれません。(政経・国際番組部 松村亮) つらいのに…言いだせない 12年前の大学生の夏、野外でステージを設営するアルバイトをしていた私は、突然、手足に力が入らなくなり、舌がしびれるような感覚に襲われました。視界が真っ暗になり、次に目が覚めた時はベッドの上でした。「熱中症」でした。のどが異常に乾く。日ざしがやけに重く感じられる。なんとなく兆候はありました。しかし、当時の私は言いだすことができませんでした。私の仕事は鉄パイプや足場を運ぶ仕事でした。職人たちが忙しく動き回る厳しい現場。「熱中症みたいなんですけど…」などと言おうものなら「お前、もう帰っていいよ」と言われかねない。そんなことをぐるぐると考えていたのです。 言いだせなくても大丈夫 体調が悪いのに言いだせない。働く人には珍しくないそのような我慢が、より深刻な事態を招くのを防ごうと、企業の間で取り組みが進んでいます。使うのは、体に装着して使う「ウエアラブル端末」です。大手損害保険会社「損害保険ジャパン」は、去年7月から、ウエアラブル端末による熱中症の見守りサービスを始めました。従業員に腕時計型の端末を装着。4秒に1回、脈拍を計測します。熱中症の発症につながる異常が検知されるとアラートが鳴り、本人や上司も確認できる仕組みです。 熱中症 雨の日こそ要注意 サービスは、働く現場でどのように活用されているのか。7月、静岡県にある建設会社を訪れました。どしゃ降りの雨の中、作業に当たる担当者が教えてくれたのは、雨の日こそ熱中症への注意が必要だということでした。 現場の従業員は長袖、長ズボンの作業着。雨の日は、さらにその上からカッパを羽織ります。また現在は、新型コロナウイルスの感染防止対策としてマスクも着用。湿度の高い雨の日は、まるでサウナに入っているような状態になるといいます。「あっつい…」作業をしている人たちから、何度もため息が聞こえてきます。 この道30年のベテラン、長田廣行さん。20年ほど前、仕事中に熱中症になりました。長田さんもその時、周囲に体調の異変を伝えることができませんでした。 長田さん「自分でもやばいと思って足場から降りようと思ったのですが、手すりにつかまったまま、あとは覚えていないです。みんながやっているのに自分だけ体調が悪いから休ませてとは言いにくい。特に仕事をしていると、工期に追われて『きょう中にここまで』というのがあり、どうしても『大丈夫か』って口頭で相手に問いかけても、意地を張って『大丈夫です』っていうのが普通なんです」 ウエアラブルで兆候キャッチ この会社では、ことし6月からサービスの利用を始めました。まずは2週間ほど端末を装着すると、AIが個人に応じた基準値を作ってくれます。熱中症にかかる状況は、同じ環境下でも大きな個人差がありますが、個人の基準値があることで、天候など環境の変化による影響や「きょうはなんとなく体調が悪いな」といったその人自身のその日のコンディションもAIが判断。異常を報告してくれる仕組みです。 上司は、パソコンやスマートフォンで従業員の健康状態を随時確認。従業員に直接休憩を指示できるほか、GPSで位置情報も送信されるため、緊急事態の際には、近くの病院を探したり救助に向かったりできるようになっています。 滝田社長「熱中症のリスクが見える化され、何か数値に異常があればすぐ連絡をして、休憩するよう言えるところが有効だと思います。実際に仕事をしていくうえで、こういう業種は熱中症とつきあっていかなければならない。対策をし、予防していくのは企業の務めだと思う」 サービスを提供している損害保険会社によりますと、これまでに建設業や製造業など、全国のおよそ500社がこのサービスを導入しました。損害保険会社では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うマスクの着用で熱中症が起こりやすい環境になっていると考える企業が増えていることも、導入を進める企業の増加につながっていると見ています。 “感情”も見守ります ウエアラブルデバイスが見守る範囲は、働く人の“感情”にまで広がっています。大手電機メーカー「NEC」が手がけているのは、従業員の感情を“見える化”するサービスです。 腕時計型の端末で従業員の脈拍を測定し、脈拍のゆらぎなどを解析。従業員の感情を「喜」「怒」「哀」「楽」の4種類で表示します。「楽」であればリラックスしている状態。「怒」であればストレスを感じている状態だと評価します。 検知する対象はあくまでも心理的な変化です。走って脈拍が上がるといった身体的な要因の変化は検知しない仕組みで、愛知県の大学の医学部と共同で開発しました。こうした感情の状態は、本人と職場の上司が確認することができます。時間帯ごとに喜怒哀楽の動きが可視化され、仕事や人間関係に悩みはないか、業務で過度な負担がかかっていないか、上司が部下を気遣うきっかけにすることができるといいます。 コロナ禍で新たな需要も このサービスは、2年前に販売を開始。これまでに介護業界や建設業界、製造業などに広がり、数千の端末が販売されたということです。 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、患者への対応に追われる病院からの問い合わせも相次いでいます。また、テレワークを進める企業が、顔を合わせなくても従業員を見守ることができるサービスとして導入するケースもあるということです。サービスの担当者は、「従業員が気付いていない、気付いていても言いだせない不安やリスクはたくさんある。それらをウエアラブルデバイスが見つけ、よりよい働き方を提案してくれる可能性を広げたい」と話していました。 ウエアラブル 働き方を変えていくか こうしたサービスの導入にあたっては、企業側は、従業員から事前の同意を得ることや、プライバシーの保護に細心の注意を払うことなど、対応が求められます。私自身、心身の状態に関する個人情報を提供できるかと言われると、ちゅうちょする部分もあります。しかしこれまでの自分を振り返ると、アルバイトをしていた時も、社会人になったあとも、言いたいけれど言えない、職場でのそんな悩みが大なり小なりありました。こうした一人一人が直面する悩みや課題に企業が向き合うことは、一見、非効率にも見えますが、一方で、職場の問題点を掘り起こし、生産性を向上させるチャンスにつながるかもしれません。ウエアラブル端末が担う見守りサービス。体と心の両面から、今後どのように働き方を変えていくのか、注目していきたいと思います。 政経・国際番組部松村 亮2012年入局福島局、首都圏放送センターを経て、2019年から現所属

ビジネス特集 デジタル庁 期待される民間の力 | IT・ネット

デジタル政策の司令塔となるデジタル庁が発足しました。行政手続きのオンライン化など、国や地方自治体のデジタル化を加速させることが狙いですが、デジタル改革が進むかどうかは民間の力も大きなカギとなりそうです。(経済部記者 永田真澄 / 猪俣英俊 / 加藤誠) なぜデジタル庁? なぜデジタル庁ができたのか?きっかけは、新型コロナウイルスをめぐる対応でした。 新型コロナの給付金の申請手続きなどを巡って、デジタル化の遅れによる弊害が浮き彫りになったのです。各省庁や自治体が、システムを別々に構築し、縦割りとなっているケースが多いことが背景にあります。 日本のデジタル化 待ったなし! 行政手続きのオンライン化や専門人材の配置といった状況から、各国の電子化の進捗を調べた国連の「電子政府ランキング」によると、日本の順位は14位。 日本のデジタル化は世界でも遅れをとっているのが現状です。こうした状況を抜本的に変え、縦割りを打破しようと作られたのがデジタル庁です。国や自治体のデジタル情勢に詳しい専門家は、日本のデジタル化は待ったなしの状況になっていると指摘しています。 野村 主任研究員「電子政府をやると言い始めたのは20年前でしたが、紙の書類で処理するのが当たり前で、手続きを根本から変える必要がありました。デジタル化は、効果がすぐに現れないと考えられていたため、あまり進みませんでした。この20年間を取り戻すために、民間の力をうまく活用しながら、ものすごいスピード感で取り組む必要があります」 デジタル化 暮らしが変わる? 600人体制でスタートしたデジタル庁。専門性の高いIT人材を確保するため、職員の3分の1にあたるおよそ200人を、IT企業など民間から登用しました。 民間の力も活用してバラバラだったシステムの仕様を標準化し、クラウド上で運用できる仕組みに作り変えることで、国と自治体の連携をスムーズにしシステムの維持管理費用を抑える計画です。 各市町村の負担が減り、税金や介護保険などの手続きでデジタル化が進めば、私たちが紙で申請していた児童手当や介護関連の申請もスマホからできるようになるといいます。 マイナンバーも活用し、銀行の口座情報などと連携させ給付金の支払いを迅速に行うことや、運転免許証との一体化を進め、マイナンバーカードでさまざまな手続きが行える社会を目指しています。 自治体のデジタル化 企業の支援も 私たちが住む自治体は、本当にデジタル化されるのでしょうか。小規模な自治体では人材も乏しいことから、どう進めればいいのか分からないという声もあがっています。こうした声に応えようと取り組む企業があります。 大手複合機メーカーのコニカミノルタは、デジタルに関する先進的なノウハウを自治体どうしが共有できるシステムを開発しました。自治体の行政手続きをおよそ4800通りに分類し、例えばある手続きをスマホによるオンライン申請ができるように変えたい場合、ほかの自治体がどのような手順で導入したのかを参考にできます。この会社では、NECやソフトバンクなどと連携し、自治体のデジタル化を支援したいとしています。 別府部長「このシステムを通じて、自治体が抱えるデジタル化の課題なども発信していきたいです。住民サービスを向上させるため、スピード感を持って取り組んでいきます」 公共データ開放で新ビジネス 今後デジタル化が進めば、企業側にとってもビジネスの可能性が広がりそうです。期待されるのが、国や地方自治体の情報が使いやすいデータの形で公開されることです。 例えば、国土交通省ではモデル事業として、立体地図データを一般に公開しています。これまで、役所内にとどまっていた地図データを、オープンデータにすることで、まちづくりのほか、アプリの開発など新たなビジネスに役立ててもらおうというのです。 ドローンの開発を手がける東京のベンチャー企業「A.L.I.Technologies」では、公開されている地図データを使って、都心などでドローンを使った物流サービスを実現しようと実験しています。 地図データが公開されたおかげで、現地に実際に行かなくても、ドローンの飛行ルートを作成することができ、運行に必要なコストや時間が大幅に削減できるといいます。現在、公開されているのは全国の56都市ですが、デジタル庁の発足で公開データがさらに増えれば全国各地でサービスを展開できると期待しています。また、飛行中に撮影したデータを地図にフィードバックし、最新の状態にアップデートすることも検討していて、官民が一体となってデータの価値を高める取り組みが行われる可能性もあります。こうした取り組みが進めば、ドローンが縦横無尽に飛び交い、物流の主役となるような未来が実現するかもしれません。 片野社長「地図データがなければ、どこを飛ばすか飛行ルートを作るため、現地での調査に膨大なコストがかかります。信頼性が高い国のデジタルデータを使うことで飛行の安全性が増し、物流などで新しい価値の提供につながる可能性が高まります」 デジタルデータで新たな価値を 国や自治体は、このほかにも避難所や防火水槽といった防災関係のデータなどもすでに公開していて、デジタル庁の発足を機に、民間企業などによるデータの有効活用がさらに進むことが期待されています。 今後、デジタル庁は、法人や土地、インフラ、交通、気象といった分野で、国などが持っているデータについて、規格やルールなどを統一し、社会の基幹となるデータベースをつくる計画です。「21世紀の石油」とも呼ばれるデジタルデータは、競争力や価値の源泉とされ、各国がしのぎを削っています。データの利活用をいかに進めるかが私たちの暮らしや経済の活力に直結するだけに、デジタル化は待ったなしの状況です。ただ、個人情報の保護や、サイバーセキュリティなどに対する懸念もあります。また、民間の力を活用することから、システムを調達する際に所属していた企業に対して便宜供与が行われないかなど、公平性や透明性の確保も課題となります。 デジタル化の遅れを挽回するために、デジタル庁にはこうした懸念に対応しつつ、司令塔役として改革を断行する強力なリーダーシップが求められると専門家は指摘しています。 日本総合研究所 野村敦子主任研究員「日本はデジタル化が遅れていますが、逆に世界の成功事例を取り入れやすい面もあります。デジタルデータは社会課題を解決したり、新しいサービスを生み出したりする大きな可能性があります。デジタル化は一丁目一番地の重要課題で、デジタル庁には旧態依然とした規制や慣行を打破する役割が求められていると思います」 経済部記者永田 真澄平成24年入局秋田局や札幌局を経て現所属総務省や情報通信業界を担当 経済部記者猪俣 英俊平成24年入局函館局や富山局を経て現所属電機メーカーを担当 経済部記者加藤 誠平成21年入局帯広放送局を経て現所属情報通信業界を担当
キユーピー 主力のマヨネーズ4月から値上げへ 卵価格急騰 | NHK

キユーピー 主力のマヨネーズ4月から値上げへ 卵価格急騰 | NHK

大手食品メーカーの「キユーピー」は、鳥インフルエンザの感染拡大の影響や、飼料の高騰で、卵の価格が急騰しているなどとして、主力商品のマヨネーズなどをことし4月から値上げすると発表しました。 発表によりますと、値上げの対象となるのは、家庭用ではマヨネーズ類やタルタルソースなど合わせて36品目で、参考小売価格でおよそ3%から21%引き上げます。代表的な「キユーピー マヨネーズ」の450グラム入りの商品の場合、税込みで、これまでの475円から520円に引き上げられます。また、業務用では、マヨネーズ類や卵の加工品合わせて259品目について、出荷価格でおよそ1%から17%引き上げるとしています。いずれも、ことし4月1日の出荷分から値上げされます。理由について会社では、鳥インフルエンザの感染拡大や飼料の高騰を受けて、卵の価格が急騰しているうえ、さまざまな原材料価格や資材費などの上昇が続いているためだとしています。卵をめぐっては、コンビニエンスストア大手のセブン‐イレブン・ジャパンが1月31日、鳥インフルエンザの流行で供給が滞っているとして、卵を使った一部商品について販売を休止したり、卵の量を減らしたりするなどの対応をとっていて、影響はさらに広がりそうです。

Microsoft Security があらゆるビジネスを包括的に保護 – News Center Japan

Security, Compliance and Identity 担当コーポレートバイスプレジデント バス ジャカル (Vasu Jakkal) ※本ブログは、米国時間 11 月 2 日に公開された “Protect your business with Microsoft Security’s comprehensive protection” の抄訳を基に掲載しています。 組織のセキュリティの確保や継続が容易だったことはありません。しかし、この 1 年間で、脅威の状況は大きく変化し、あらゆる業界のあらゆる規模の組織が大きな影響を受けています。サイバー攻撃の頻度と巧妙さは著しく増加しました。フィッシング詐欺やランサムウェアの被害に関するニュースが毎日のように報道されています。重要インフラや医療機関など、かつては「聖域」とみなされていた組織や機関が、悪意のある者のターゲットになることで人命に関わるリスクが増しています。 また、ハイブリッドワークが定着した中で、個人のデバイスが企業ネットワークの重要な部分となることによって攻撃対象が拡大・変化し、増加しています。私の周りの多くのセキュリティチームは、ビジネスのレジリエンスを高める方向へと戦略を変更しており、賢明なことに、その多くがゼロトラスト のアプローチを採用しています。これらのチームは、人々や組織を危険から守るために、舞台裏で確信を持ってたゆまぬ努力を続けています。そのようなスーパーヒーローたちを念頭に置きながら、本日は、Microsoft Security の最も包括的なセキュリティ、あらゆる規模の組織の成長、創造、革新の支援についてのエキサイティングなニュースを皆様にお伝えします。 あらゆる人を保護 サイバー攻撃者は差別なく攻撃します。中小規模企業も大企業と同様に被害に遭いやすいのです。しかし、マイクロソフトの調査によれば、中小規模企業の約 60 パーセントが、リソースの不足や専門的なセキュリティスキルの不足を理由として、安全なサイバーセキュリティを維持するための十分な体制が整っていないと回答しています1。本日発表する Microsoft Defender for Business は、今月末にパブリックプレビューが開始され、従業員数...
そごう・西武 売却めぐり 労働組合がストライキ検討で投票へ | NHK

そごう・西武 売却めぐり 労働組合がストライキ検討で投票へ | NHK

セブン&アイは主力のコンビニエンスストア事業に経営資源を集中する一環として、傘下のデパート「そごう・西武」のすべての株式をアメリカの投資ファンドに売却することを決めています。関係者によりますと、この決定をめぐり、そごう・西武の労働組合は、雇用の維持への懸念などからストライキを行うかどうかの検討に向けて、全国の組合員による投票を行う方針を決めたことがわかりました。実際にストライキを行うためには、投票によって組合員の過半数の賛同を得てストライキ権を確立することが必要で、投票結果を受けて、実施するかどうか決めることにしています。労働組合は、先月下旬に開かれた臨時の中央大会でこの方針を決議し、3日、全国の組合員向けに通知した上で、早ければ今月中にも投票を行うものとみられます。そごう・西武の売却をめぐっては、旗艦店の西武池袋本店の売り場の構成をめぐって、地元の自治体などから懸念の声も上がっていて、組合員が投票でどのような判断を示すかが注目されます。これについてセブン&アイは「コメントは差し控える」としています。

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